突然ぼくは直子と歩いた秋の草原を思い出す。
どこにあるのか誰も知らないおそろしい野井戸のある優しく穏やかな世界。
直子が死の影を背負った滅び行く美しさを象徴するならば、
緑はたくましく生き抜いてゆく美しいいのちの象徴に感じられる。
死の影を背負った滅び行く美しさ、たくましく生き抜いてゆく美しさ。
あるいは
静謐に満ちた「世界の終わり」、躍動するいのち。
彼女達のような女性は現実には存在しないだろう、たぶん。
そのことは女性のほうがよくわかるだろう。
しかし、ぼくはこの物語、そして彼女たちに触発されて
自らの人生における恋人たちに思いをはせずにはいられない。
自分が本当に愛したひとがだれだったのか、
それを知ったとしても、いまさらどうにもなるものでもない。
そんなものは単なる残像に過ぎないかも知れないじゃないか。
それでもなお、知ることは意味のあることだ、とぼくは信じている。
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